水の記憶・ヒグマ春夫の映像試論
川崎市岡本太郎美術館
2004年/Haruo Higuma

出品リスト
<ミズの記憶・記憶する水>2004年/インスタレーション/ビデオ、紗幕、プラスティック、水、ガラス瓶、写真
<NEST TRIANGLE>2004年/インスタレーション/ビデオ、紗幕、ハーフミラー、針金、水糸
<WATER MOON-1999>2004年/インスタレーション/DVD、紗幕、プラスティク、水、鉄
<キノハコノコ>2004年/インスタレーション/DVD、スティール製ロッカ
<DIFFRENCE>2001年/インスタレーション/ビデオ、紗幕
<覗き見の部屋>2003年/インスタレーション/ビデオ、紗幕

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ミズの記憶・記憶する水

「ミズの記憶・記憶する水」は、1999年7月22日にスタートした。この日は、沖縄県庁前の池で採集した日だ。このプロジェクトは、水を採集することからはじまっている。水を採集 するためには水のある場所に行かなくてはならない。身体の移動と環境の把握が必要になる。わたしは身体は常に二通りの方法で情報をインプットしていると考えている。それは脳が記憶する場合と、皮膚感覚を通して記憶する場合とである。そこには再生可能な情報もあれば身体の記憶の中に留まっている記憶情報もある。
採集した水と現場の写真展示は、インスタレーションという方法をとった。水を素材にしていると環境問題への提起ですかと問われることもある。水の循環が命の源を生み出していることを強調している。

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ミズの記憶・記憶する水

「ミズの記憶・記憶する水」は、いろんな場所で水を採集し小さなビンに詰め、その水があった場所の状況写真と対で展示した。(川崎市岡本太郎美術館/2004年2月27日~4月11日) このプロジェクトには完成はない。絶えず継続し、増殖している。世界のあらゆる地域の水が小さなビンに納められ、映像と共にインスタレーションされる状態を想像している。インスタレーションに組み込まれている映像の音は、「10万年前の氷が弾ける音」(2004年制作)
This concept comes from the collection of water. I have collected water from four different countries. Small containers of this water are exhibited as well as videos and photographs of the water. This art collection not only raises questions about environmental issues but also emphasises water circulation as the origin of life. There will also be a visual performance concerning water.

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NEST TRIANGLE

NESTは、蜘蛛の巣にように、或いはインターネット上の回路のように、無数に三角形の情報膜が張り巡らされた構造をしている。その構造は白いツリーのように立体的に構成されている。この構造体に映像を投射すると、映像が立体的に浮かび上がって見える。観客は観るというより能動的に映像と関わることになる。映像は物質のように身体と直接関わりを持って現れる。ここで投影される映像は、イン スタレーションされる状況によって異なるが、例えば、波が押し寄せてくる映像を投影すると、無数の三角形の情報膜が舞い上がるように見える。また色彩が ゆっくりと変わっていく映像を投影するとまさに光の彫刻として現れる。三角形の情報膜の幾つかに光りセンサーを設置すると映像によって音を制御することも できる。 2004年2月27日~4月11日まで、川崎市岡本太郎美術館での個展に「NEST・TRIANGLE」として発表した。(2004年制作)床に映る映像と三角形のスクリーンの影、中に入ると身体にも映り込む。三角形の情報膜。
<NEST・TRIANGLEとの関連イベント>ゲスト:2月28日/千野秀一+寒河江勇志。3月6日/原田節。3月20日/増田直行。3月27日/中村明一。4月3日/坂本弘道。4月10日/竹田賢一。

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キノハコノコ/パフォーマンス:木野彩子/撮影:川上直行

等身大の身体がやっと入るくらいの業務用ロッカーを使って、パフォーマンスを行っている ダンサーを見た。ロッカーに入り足を延ばし手を曲げ動く様は、滑稽に見えたし、瞬間的に危険も感じた。が、それが究極の身体表現だと解ったとき、その一つ 一つの仕草を興味深く見ることができた。そして、考えたことは生な身体とビデオに撮られた身体との対比だった。身体はどんなときに美しく見えるのだろう か?。ロッカーの中で動く身体は美しかった。また、時々しまる扉が瞬時に次元移動をするのを眼のあたりにしたようだった。そのことから密室に閉じ込められ た身体と開かれた空間に開放された身体という二つの次元を想定してみた。その二つの次元を映像メディアを使って一つの場で現してみたいとも考えてた。都市 の部屋は密室なのか、街は身体を開放しているといえるのか、といったことは当然考えられるとして、そういった空間と自然に対峙した身体はどんな差異を見せ るのだろうかというところに強い興味を持っている。(2004年制作/木野彩子との共同制作)

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Water Moon 2004/パフォーマンス:不動まゆう、衣装:市原素直/撮影:荒川昭男

「Water Moon 2004」は、月をイメージした映像と水をイメージした映像の二種類が、二枚の円形のスクリー ンを透過して床で重なり映る。床にはアクリルプールが置いてあり、そのプールには15秒間隔で水滴が落ちている。実際には。プールの波紋と月と水のイメー ジ映像が重なって見える。観客の反応を観察して見ると、面白がっている幾つかの現象がわかる。一つは、アクリルプールに水滴が落ち波紋が拡がる瞬間である。二つ目は、投射されている月と水の映像がアクリルプールの波紋と重なることである。三つ目は、身体オブジェがアクリルプールの下に居るときである。また、この作品は、観る人の視点によって、さまざまな体験の仕方があることも確認した。この作品は、単なるインスタレーションに留まらず、素朴なインターラ クティブの要素を孕み持っている。

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Water Moon 2004

2004年イスタンブールのAKBank Culture Art Centerで、グループ展があり「Water Moon2004.9」を展示した。この作品は「Water Moon1999-2004」の延長線上で考えているので構造的にも似ている。違うところといえば、チエシメの水を水滴に使い、ボスポラス海峡の海水を月のサイクルを表す写真の上に置いたことである。
2004年~2005年にかけて、テヘラン現代美術館で、グループ展があり、「Water Moon」「Difference」「Memory of Water」「Peek」の4点のインスタレーションを展示した。その中の「Water Moon」は、構造的には「Water Moon 2004」「Water Moon 2004.9」と似ているのだが、違いは月と水のイメージ映像が重なるところに、100個のコップを置きカイワレ大根を発芽するようにしたことである。
Water Moonは、わたしと不動まゆうがフィールドワークを繰り返しながら創りあげることを目的に、1999年から進めているプロジェクトである。その創造の源点は、「Water Moon」を地球に一番ちかい星として想定したことである。勿論、架空の星であり現実には「Water Moon」という星は存在しない。しかし二人のコミュニケーションがネットに依存していることを見れば、脳内に「Water Moon」という星が存在しているともいえる。二人は「Water Moon」という星に住んでいる。二人のコミュニケーションはネットで行われている。そしてその星でつくりだされた、形や様式を人間の住む地球上で具現化させたいと願っている。

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DIFFERENCE/撮影:荒川昭男

「間違い探しゲームを考えてみる。二つの絵があって、違うところを探し当てるゲームである。間違いは、どこにあるのか。片方をオリジナルとすれば、もう 片方はコピーである。片方が本物なら、もう片方はまがい物である。では、間違いは、コピーとまがい物の側にあるのか。コピーとまがい物が、間違っているの か。そんなことはない。両者の違いは、間違いなく、両者の間にある。差異は、両者の間にあるのだ。では、差異はどこから出現するのか。間違い探しの制作過 程を考えてみる。制作者は、差異を出現させる為に二つの絵を書く。しかし制作者の意図が、差異を出現させるのではない。その意図がなくても、二つの絵を描 くと、必ずどこかに差異が出現する。たとえ瓜二つであっても、出来上がる時間と空間に差異がある。二つの絵が出現するということは、差異が出現することである。むしろ差異こそが、二つの絵を分化して現実化するのだ。差異の哲学の基本的な問いは、このような差異が、どこから出現するかということであ る。・・・・」(「ドゥルーズの哲学」小泉義之訳書)
この文章が「DIFFERENCE」のヒントになっている。ビデオプロジェクターは投影すると、一点透視の構造をつくる。空間に半透明のスクリーンを何 枚も設置すると、投影された映像は、小から大へとスクリーンの数だけ画像をつくる。その画像と画像の間を移動することでこの作品は成立する。 そして、ドゥルーズの言葉を借りれば「差異がどこから出現するのか」を見極めることになる。
川崎市岡本太郎美術館での「DIFFERENCE」は、空間に透過性のあるスクリーンを何枚も張り巡らし、そこに映像を投影するという構造をしている。投影する映像は、小から大へとスクリーンの数だけ画像をつくりだし、一点透視の構造をつくりだす。同じ画像が大きさを違えて差異をつくりだしている。その 画像と画像との間を移動しながら視点の位置を変えて見ると、立体的に空間がつくられていることがわかる。この作品は、様々な差異が立ち上がる場を示唆して いる。と同時に時間と空間の経験をも強要する。
空間は無境界性であり、「空間を区切ることはできないが、区切れるように錯覚するのは、空間の中に物体を置くからである」。といわれるように、空間に透 過性のあるスクリーンを張り巡らすことで、空間が幾つも区切られ、空間が立体的に見えていると錯覚する。また、時間それ自体も仕切ることはできないが、映 像は時間軸で構成されているので、その映像を、空間を区切った透過性のあるスクリーンに投影すると、映像が立体的になって表れ、空間と時間を体験すること になる。「DIFFERENCE」という作品は、空間と時間を具体的に経験する装置といってもいいのかも知れない。
この「DIFFERENCE」に使われた映像は2種類ある。一つは、自然的破壊と人為的破壊をテーマにした映像である。もう一つは、自然的破壊と人為的 破壊の映像から受けるイメージを言葉で現し、その言葉自体をアニメーションの手法を使って、映像にしたものである。自然的破壊と人為的破壊をテーマとした 映像は、水の球体が、日本から外国、そして、都市・農村・海・川・部屋・カラダ等々を背景に浮遊している。水の球体は、さまよい、ある瞬間は宇宙へ、ある 瞬間は地中へ、ある瞬間はカラダの中へ入り込み、自然環境の大切を問う。
「DIFFERENCE」は、2002年に制作/第5回岡本 太郎記念現代芸術大賞展で優秀賞 2008年「DIFFERENCE-2008」として国立新美術館での「DOMANI・明日」展に出展。

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覗き見の部屋/パフォーマンス:昆野まり子/撮影:荒川昭男

『ヒグマ春夫の覗きみの部屋・・・次元移動の装置として』あるいは自己言及のアート
  デュシャンの「遺作」つまり『1.落ちた水、2.照明用ガス、が与えられたとせよ』は、「大ガラス」つまり『 花嫁はその独身者たちによって裸にされて、さえも』の三次元ヴァージョンだと思われれる。「大ガラス」が、《花嫁はその独身者たちによって裸にされて、さえも》なるものの二次元的提示であるのに対して。もっとも、観客の行 為を見て言えば、観客が遠近法でできた二次元平面を見るときに、三次元のものの転写を見ていると言える。そうであれば、原理的には、観客が三次元のものを見るとき四次元のものの転写を見ているとも言える。
 しかし、『ヒグマ春夫の覗きみの部屋・・・・・・次元移動の装置として』は、これを逆転するかように見える。 覗き見の小穴から奥を覗くと、オーロラのような極薄のヴェールは揺れその奥でダンスがエロティックに踊られてい るのだが、どうも奥行きが欠落していて二次元的にしか見えないのである。デュシャンがエロティスムは三次元から 四次元へ次元移動するとき蝶番のような役割を果たすというが、ヒグマの場合が、これが逆になっているように 見える。なぜだろうか。
 ヒグマの場合、おそらく、覗き見るものにとってはその内部が逆光で照明されているため、ヴェールが二次元的に しか見えないだけでなく、その奥のダンスも二次元化してしか見えないのだろう。そうであるならば、ヒグマは、カ メラ等の遠近法的機材を用いずに三次元的振る舞いを三次元において二次元的に捉えたことになる。いったいこれを どう考えればよいのだろうか。アートとは、さらにはわれわれが見る世界とは、あるいは「われわれ」という世界が 、一種の表象でしかないと言っているのだろうか。そうであれば、ヒグマのアートは、きわめて自己言及的なアート というべきだろうか。(広域芸術論、北山研二)

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水の記憶・ヒグマ春夫の映像試論展の関連企画イベントとしてコラボレーション「ミズの記憶」
企画・構成:ヒグマ春夫/ゲスト:柳和暢、宮下恵美子、立花あさみ、桐谷果甫、北村誠、海津晃子


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水の記憶・ヒグマ春夫の映像試論レセプション


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近藤幸夫

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