吉本義人彫刻展 映像ダンスパフォーマンス 2012/08/24
2011年3月5日(土曜日)映像パフォーマンス 第1部 12:00~ 第2部 15:30~ 定員25名
ヒグマ春夫(映像) 宮田糸旬子(音楽)
パフォーマンス観覧料1.000円(吉本義人彫刻展入場料を含む)
参加お申込み・お問合せは、佐野文化会館 TEL.0283-247211

Jointed Form=連態
詳細
昨年、佐野にある吉本義人さんのアトリエを訪問した。アトリエは奇麗に整理整頓されていて、さまざまの工具が目に飛び込んできた。思わずその美しさにカメ ラのシャッターを押した。気が付いて見たら100枚以上を撮っていた。再生してみると写真はいかにも硬そうだ。少し違った写真を重ねてみよう。身体が写っ ている写真を重ねてみた。無機質と有機質のバランス感覚が実に面白い結果になった。その加工された写真に、フランスのサンマロで撮った海の映像を重ねてみ た。海の映像もエフェクト画像が重なっている。二重三重の重なりが画像を複雑にする。いろんな場所で撮った映像や写真を重ねる面白さは、重ねることによっ て生み出される画像の増幅と反復にあるのかもしれない。絵を描く行為と似ているのかもしれな。ここに宮田徹也氏の文章を載せたのは、モチーフのことが書か れていたからである。言葉で表すとこんなことになるのか。今回、こうして出来上がった映像を吉本義人さんの彫刻に投影する。投影すると映像がどうなってい くかは解らない。パフォーマンスは一過性だ。現場に立ち会うしかない。同じ会場で宮田糸旬子さんはヴァイオリンで音を奏でる。彫刻・映像・音楽とのコラボ レーションである。

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<引用>・・・・「除夜舞」での公演は至ってシンプルであった。舞台を周りながらも静謐な演奏に終始した宮田、ぷちぶくろそのものの存在感のなさ、ヒグマ のぷちぶくろ内での撮影と行動。ひぐまは「内部に固執する」としながらも、至って内部と外部は通低する。それは内部と外部を逆転させる発想ではない。内部 に居ながらも外部を想起することは、外部に立っていても内部を想い起こす作業に似る。ヒグマは内部で聴くヴァイオリンの音を、映像として外部に提示したの であった。その音は宮田と我々しか聴くことができない。しかしヒグマの映像は、ヒグマ自身で撮影されながらもヒグマが見ることはできない。この多岐に亘る 発想こそ、ヒグマが常に持っている動機だということができる。ヒグマは映像を用いて、近代芸術を超克しようとしているように思える。たとえ最新の技術を投 じても、その思想が近代的であれば近代主義に陥ってしまう。その理由は二点ある。一点は映像「装置」である。ヒグマは映像を複製として使用することは、決 してない。映像が持つ物質感を持たずに「光」である習性をライトのように利用することがあっても、それをメインに据えない。それどころかヒグマは映像を映 像として用いるのではなく、今回のように音楽に、他の場合にはダンス、固定された美術作品、声にまで転換するのである。そこには直接的なイメージの転換と いうよりも、間接的な物質感の変化を想起させるのである。この間接的な物質感の変化は、ヒグマの持つモチーフが支えている。ヒグマのモチーフは「撮影」す ることと「映す」ことである。撮影されたものが映し出されるという当たり前の現象を、全く異なるものに転換する。そこにはライブ、即ちその時の実感によっ て動作が変化し、予め撮影されたものがあればそれとイメージを重ね合わせることで過去というものが現在に通じて作用する様を顕在させるのである。今回の場 合のようにライブ映像のみの場合でも、今見たこと=撮影したことがすぐさま過去になり、その過去と直ぐに対峙する即興性をヒグマは持ち合わせているのであ る。このタイムラグは、映してから映像になるゼロコンマ何秒でも発生する。それは人間が指先に触って脳が感知する時間に比べれば、相当に遅い。その間に浮 かび上がる更なるモチーフを重層化させるので、常にタイムラグが発生する点がヒグマの作品の持ち味なのだ。ヒグマの公演に現象のみを見詰めても、何も見え てこない。一つのモチーフを積み上げて一つの完成された作品を待ち侘びるのは、近代で終了すべきなのだ。モチーフにタイムラグがあり、その時間とは現在と 過去を反復しながら未来に向かい、未来はさらに過去にフェードバックする。このモチーフのあり方にこそ、現代に映像を用いる意義が生まれる。宮田は幼少か ら学んできた学習が即興を行うことで徐々に表に出てきている。そのようなあり方すらも、ヒグマのモチーフなのである。宮田徹也(日本近代美術思想史研究)

吉本義人/YOSHIMOTO Yoshihito
1946 東京に生まれる
1969 東京藝術大学彫刻科卒業
2009 「Art Session TSUKUBA」 つくば美術館 2011
2011 佐野市文化会館 個展/栃木
2012 天王洲セントラルタワー 個展/東京
   「The Mono Show」 M50 創意空間・半島1919/上海
   「館林ジャンクション-中央関東の現代美術」 群馬県立館林美術館
2013 「みる、ふれる、きくアート」 栃木県立美術館
   「KI展」 M50 Office 339/上海

長岡ゆり/NAGAOKA Yuri
モダンダンス、バレエを経て舞踏に至る。 東京を中心に、欧米などでもワークショップ、公演を継続。 ミュージシャン、美術家との即興コラボレーションも多く行っている。
舞踏カンパニーDance Medium主宰。 2011年発表作品「帰ル」で第43回舞踊批評家協会賞授賞。

ヒグマ春夫/HIGUMA Haruo
2002年映像を用いたインスタレーション「DIFFERENCE」で、第5回岡本太郎記念芸術大賞展で優秀賞。釜山ビエンナーレ2002で映像パフォー マンス。2004年「水の記憶・ヒグマ春夫の映像試論」川崎市岡本太郎美術館で個展。テヘラン現代美術館で「The Shining Sun」展。2005年府中市美術館でライブ・インスタレーション「深層風景」。2006年・2009年大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ参 加。2010年Ombres et Iumieres展(フランス)。現在「映像パラダイムシフト」を継続中。

宮田絢子/MIYATA Ayako
1983 年東京生まれ。横浜在住。3歳よりヴァイオリンを始める。東京コンセルバトワールにて15年程ソロの研鑽を積んだ後、オーケストラに4年間所属。早稲田大 学第一文学部卒業。自宅近くにアトリエを構えていた画家・平井一男の影響や、9歳で古寺仏像にはまったことから、大学では美術史学を専攻する。 ACkid2010で初めての完全即興演奏の舞台を踏む。